第3回 L足立 英明
『旅をするということ』
若い頃から旅が好きでした。バックパッカーの“はしり”です。
山陰地方の小さな駅、雪の吹きこむ待合室のベンチで新聞紙を
体に巻きつけて、始発列車を待った事や、厳冬の尾岱沼で氷に穴
を開けて氷下魚(こまい)釣りしたこと等を覚えています。
一泊二食で450円の時代です。
家庭を持って、そんな旅からは遠ざかっていました。
45歳の時に肺癌の告知を受け、少なからず動揺の日々を何日
か過ごしました。自身では半ば諦めかけていたのですが、どうに
も納得 できないと、家内に転院を強く勧められ、結果、誤診だった
ことが判明するという貴重な体験をしてから、生きていく日々の中
に自身が楽しむ という部分があっていいのではないかと思うよう
になりました。
カナダ イエローナイフで-47℃のオーロラ観察
バンクーバー島でスチールヘッド釣り。
シシリー島の古代遺跡。
ウルビーノ、オルビエート、アッシジ、シエナ,ルッカ、
サンジミニャーノ、ベニス、トリエステ、ボローニャ、
フィレンツェ、ピサ等イタリヤ中世都市。
そしてナポリ、ローマ、ミラノ、コモ。 スイスのルガーノ、
ルツェルン、インターラーケン。
オーストリアのインスブルック、ザルツブルグ、ウィーン。
ハンガリーのブタペスト、トカイ、エゲル。
ポーランドのワルシャワ、クラクフ、ビルケナウ。
クロアチアのザグレブ、ドブロブニク等々。
昨年は、死ぬまでに一度行く事が出来たら本望と、永年憧れ
ていた南米の南端、世界の果てと呼ばれるパタゴニアのパイネ
針峰群やフィッロイの岩峰を見ることが出来ました。
自分を知る人がいない土地に、ひとりで仕事も家族も忘れて時
を過 ごす。自分にとって旅とは刹那的なものです。我が儘なんで
す。 今年のお正月は蟄居謹慎の身です。
もう少し時が経ったら、もっと自由に季節を選んで、ときには家
内も連れて 旅 に出たいものです。
その頃まで体が持つかは心配では在りますが。
『会長 L.安藤英樹』
一人旅が趣味の個性的な人物です。
寡黙ですが、じっくり腰を据えて揺さぶれば、その教養の豊か
さが垣 間見 れるでしょう。
瓦職人として、黄綬褒章を受賞されました。